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大阪地方裁判所 平成5年(わ)4045号 判決

本店所在地

大阪市平野区長吉長原三丁目一六番二八号

株式会社サンディカワグチ

右代表者代表取締役

河口稔文

本籍

大阪府藤井寺市北條町一五番

住居

同府同市梅が園町二五番七号

会社役員

河口稔文

昭和二〇年一一月二一日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官熊谷保出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社サンディカワグチを罰金二五〇〇万円に、被告人河口稔文を懲役一年二月にそれぞれ処する。

被告人河口稔文に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社サンディワカグチ(以下、「被告会社」という)は、大阪市平野区長吉長原三丁目一六番二八号に本店事務所を置き、内装工事業等を目的とする資本金五〇〇万円(但し、平成四年三月三一日に資本金を一〇〇〇万円に変更)の株式会社であり、被告人河口稔文(以下、「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として業務全般を統括している者であるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと考え、

第一  昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額が別紙修正損益計算書(一)記載のとおり六二七四万四六二九円であったのに、架空の外注費を計上するなどの行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、平成二年二月二七日、大阪市平野区平野西二丁目二番二号所在の所轄東住吉税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が三四四万二〇八五円で、これに対する法人税額が一〇三万二〇〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり被告会社の右事業年度の正規の法人税額二五三九万一九〇〇円と右申告税額との差額二四三五万九九〇〇円を免れ、

第二  平成二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額が別紙修正損益計算書(二)記載のとおり一億三五〇八万二六八二円であったのに、前同様の不正の行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、平成三年二月二五日、前記所轄東住吉税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が六七六万五五一三円で、これに対する法人税額が一九六万一八〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり被告会社の右事業年度の正規の法人税額五三一五万二八〇〇円と右申告税額との差額五一一九万一〇〇〇円を免れ、

第三  平成三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際の所得金額が別紙修正損益計算書(三)記載のとおり九〇九五万三三二三円であったのに、前同様の不正の行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、平成四年二月二四日、前記所轄東住吉税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が八六七万二〇七七円で、これに対する法人税額が二四七万二九〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書記載のとおり被告会社の右事業年度の正規の法人税額三三三二万八三〇〇円と右申告税額との差額三〇八五万五四〇〇円を免れた。

(証拠の標目)

注・以下において、証拠中、末尾の括弧内に記載した漢数字は、証拠等関係カード(請求者等検察官)の証拠請求番号を示している。

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書二通(二七、二八)

一  東恵子の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(二三、二四)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書一三通(記録第二三-三号、同第二三-八号、同第二三-九号、同第二三-二八号、同第二三-三二号、同第二三-三三号、同第二三-三四号、同第二三-三五号、同第二三-三八号、同第二三-四四号、同第二三-三九号、同第二三-四一号、同第二三-四三号)(一一ないし一九、二二、三五ないし三七)

一  大阪法務局登記官嶽釜寿雄各認証の登記簿謄本、閉鎖役員欄用紙謄本二通(三一ないし三三)

一  被告会社作成の証明書(三四)

一  大蔵事務官作成の「所轄税務署の所在地について」と題する書面(九)

判示第一及び第二の各事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(記録第二三-一号)(一〇)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書二通(平成二年二月二七日に申告した法人税確定申告書写についてのもの、平成三年六月二一日に申告した法人税修正申告書(昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日の事業年度分)写についてのもの)(四、五)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(期間が昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日までのもの)(一)

判示第二及び第三の各事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書二通(記録第二三-四五号、同第二三-四〇号)(二〇、三八)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(記録第二三-四六号)(二一)

一  大蔵事務官作成の証明書二通(平成三年二月二五日に申告した法人税確定申告書写についてのもの、平成三年六月二一日に申告した法人税修正申告書(平成二年一月一日から同年一二月三一日の事業年度分)写についてのもの)(六、七)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(期間が平成二年一月一日から同年一二月三一日までのもの)(二)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(記録第二三-四二号)(三九)

一  大蔵事務官作成の証明書(平成四年二月二四日に申告した法人税確定申告書写についてのもの)(八)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(期間が平成三年一月一日から同年一二月三一日までのもの)(三)

(法令の適用)

罰条 被告会社

判示各罪について、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(いずれも罰金は情状により免れた法人税額に相当する金額以下)

被告人

判示各罪について、いずれも法人税法一五九条一項

刑種の選択 被告人の判示各罪について、いずれも所定刑中懲役刑を選択

併合罪の処理 被告会社

刑法四五条前段、四八条二項(判示各罪の罰金額を合算)

被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

主刑 被告会社を罰金二五〇〇万円、被告人を懲役一年二月

刑の執行猶予 刑法二五条一項(被告人に対し三年間猶予)

(量刑の理由)

本件は、主として下請を使っての内装工事業を営む被告会社の代表取締役として業務全般を統括している被告人が、被告会社の昭和六四年一月から平成三年一二月までの三事業年度で合計一億〇六四〇万円余の法人税を脱税した事案で、脱税額自体多額で、ほ脱率も三事業年度平均で約九五・一パーセントと高率の事案である。そして、脱税の目的は、兄の会社倒産の経験から、将来の不況時に備えるためであったなどとするものの、脱税した所得のほとんどは、被告人自身や家族あるいは仮名の預金として留保していたもので、とくにしん酌すべき余地はなく、また、虚偽の請求書を作成して架空あるいは水増した外注費を計上するなどした所得秘匿の態様が悪質であることなども考えると、被告会社及び被告人の刑責は重いといわなければならない。

しかし、被告会社において、現在までに本件ほ脱にかかる法人税本税、重加算税、延滞税すべての納付を終えていること、さらに、被告人には、相当以前の交通事犯による罰金前科以外に前科はなく、本件摘発後、事実関係も認めて本件を真剣に反省していると認められることなど、被告人及び被告会社のために考慮すべき事情がある。

そこで、以上のほか、諸般の事情を総合考慮して、被告会社及び被告人をそれぞれ主文掲記の刑に処したうえ、被告人に対してはその刑の執行を猶予することにした。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 竹田隆)

修正損益計算書(一)

〈省略〉

〈省略〉

修正損益計算書(二)

〈省略〉

〈省略〉

修正損益計算書(三)

〈省略〉

〈省略〉

税額計算書

〈省略〉

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